第12回作品展 三田宏行 版画展(終了)
子どもの頃、朴の木の板に絵や文字を彫り、それを版にして年賀状を刷ったという方も多いのではないでしょうか。筆で描くのとはまた違った味わいが、そこに生まれたように思います。日本の木版印刷は、百済からもたらされた経木木版を刷った文字印刷が始まりといいます。現存する印刷物で世界最古というのが、770年に法隆寺に納められた仏教経典「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとう・だらに)」なのだとか。ちなみに木版画には大きく分けて板目木版と木口木版の2種類あります。板目木版というのは、木を繊維の方向に縦に切り出した板目板を版にしたもの。浮世絵をはじめ、学校で習う版画はたいてい板目木版です。それに対して木口木版は、木を水平に切った断面を版にしたもの。今回登場するのは、木版の中でも高度な技術を要する木口木版の俊英、三田宏行さん。一見、銅版画とも思える極細の線を、木版画で描き出していて、その重厚さに圧倒されます。静謐にして深遠なる三田版画の世界をぜひお愉しみください。