宮嶋結香 作品展
LIVING HARMONY
2024.9.20[金]~11.14[木]

【第29回】宮嶋結香
https://www.yuukamiyajima.com/
画家。福島県出身。
女子美術大学芸術学部美術学科版画コース卒業。
【主な受賞歴】
・2018年 利根山光人記念大賞展 準大賞
・2016年 HB Gallery File Competition vol.27 大賞
・2015年 HB Gallery File Competition vol.26 特別賞
【コレクション】
・女子美術大学美術館
・諄子美術館
・鹿沼市立川上澄生美術館

【365cafeギャラリー過去インタビュー】
第17回 宮嶋結香 作品展 LOOK
第1回 宮嶋結香 作品展 Face to Face

【近年の個展】
<2024年>
・Maruse b1 gallery(東京)
・Galley×Cafe Jalona(東京)22’
<2023年>
365 cafe Art Gallery(西武渋谷店)21
・ヒロ画廊( 和歌山)19’ 21 ‘
・ondo gallery(東京)20’ 21’
・SUTTENDO COFFEE(埼玉)22 ‘
・art Truth(横浜)22’
・Bar 十月(新宿ゴールデン街)19 ‘20’ 21 ‘22’
<2022年>
諄子美術館(岩手)14’ 17′ 20’
JINEN GALLERY(東京)16’ 18 ‘19’
アートスペースエリコーナ(白勝企画/「ぐぜりあいのうたい」より)(福島)
<2021年>
・ondo gallery(東京)20’
・Galerie VIVANT(東京)19’ 20’
365 cafe Art Gallery(西武渋谷店)
・ヒロ画廊 ( 和歌山)19’
<2020年>
・いとなギャラリー(東京)
【近年のグループ展】
・2024年 「 モウイチド動物園」 阪神百貨店梅田本店(大阪)
「 meets!art- アートに会える 3 日間」 グローバルゲート名古屋(愛知)22’ 23’
・2023年 「 上尾トリエンナーレ 2023」 SUTTENDO COFFEE(埼玉)22’
・2022年 「齋藤ナオ・宮嶋結香2 人展」 ヒロ画廊(和歌山)
・2021年 「動物たちの楽園」 風花画廊(福島)19 ‘
「菅野由紀子・宮嶋結香2人展」 art Truth(横浜)

Brothers

Penguin 3

Sleep night 3

【見どころ】
ほのぼのとした動物たちの絵が心にしみる宮嶋結香さんの作品。動物の姿を借りつつ、愛や希望を描き出していると評判です。一度見て、二度目に改めて見ると、そこからはまた違った物語が現れる、そんな不思議さも秘めています。また、米袋に描いたり、リトグラフやモノタイプの版画を制作したりと技法も多彩。作品展が各地で開かれ、ワークショップなどでも人気を博している宮嶋さんの作品を、まずはじっくりとご覧ください。

インタビュアー 株式会社サンポスト 前田 敏之)

■人間も動物もバランスが大事。

――前回の展示から1年とちょっと。その間に引っ越しされましたが、新しい住まいになって制作に何か変化というか影響はありましたか?
〈宮嶋〉引越はしましたが、同じ地域内で、生活環境の変化はそこまでなかったため、制作自体にはそんなに影響はないかもしれません。ただ、今は部屋が1階になったので、あまり開放的に窓を開けられなくなってしまったのは残念です。
――作品制作の他に、最近、こんなことに興味を持っている、といったことはありますか?(たとえばプランターで野菜を作っているとか・・)
〈宮嶋〉特に新しく興味を持って始めたことは、最近はないかもしれないですね。本を読んだりすることは相変わらず好きです。でも最近Netflixが観られるようになって、オリジナルドラマなどを一気に観ました。
――最近特にご覧になって面白かったドラマはなんでしょう。
〈宮嶋〉ずっと観たかった「サンクチュアリ-聖域」は面白かったです。「First Love」も北海道が舞台で、映像が綺麗で良かったです。
――落語家の桂宮治さんの全国ツアー2024の手ぬぐいの絵と文字を描いたり利根山光人美術館での秋の美術館まつりでワークショップされたり、作品展だけではなく幅広く活躍されています。手ぬぐいの絵の依頼は、桂さんから来たのでしょうか。
〈宮嶋〉手ぬぐいのご依頼はまさに365cafeで桂宮治さんがお仕事の打ち合わせをされていたらしく、その時に私の展覧会が開催されていて、宮治さんとマネージャーさんが私の絵を気に入ってくれて、ご依頼いただいたんです。すごく嬉しかったです。365cafeさまさまです(笑)。
――今回の展覧会タイトルは「Living Harmony」。そこにどんな意味を込めているのでしょうか。
〈宮嶋〉私はいつも絵を描くとき、世界との繋がりや、調和する、というようなイメージを持っているような気がしています。動物を描くのも、動物たちは地球と、世界をバランスよく共有していると思うからかもしれません。人間同士も自然との関係もバランスは大切だと感じるし、自分とのつき合い方もそうだなぁと思います。それが崩れた時、争いが起きたり、自然環境も変化することを余儀なくされていくのかと思います。
――生きる上で何より大切なのが「調和」ということですね。環境破壊はもとより、各地で激しさを増している戦争などを見ても、自分の意見ばかりを通そうとしているような気がしてなりません。論語で「矩を踰えず」というのがありますが、動物たちは自然界のルールに沿って生きています。人間だけですね、すぐに矩を踰えてしまうのは……って、いきなり重い話になってしまいました。
〈宮嶋〉そうですね、それが人間というものの自然の姿なのかもしれませんが、自分たちで自分たちの生活を悪い方向へと導き、生きにくくしてしまっている感じもします。
――最近、インスタグラムで流れてくる動画を見ていて感じたことがあるんです。違う種類の動物たち(たとえば、犬と猫とか、猿とウサギとか、猫とアヒルとか)が、互いに仲良くしているのを見て、種族が違っても環境によっては仲良くできるんだ、と思いました。生きてゆくために狩りはしますが、それはあくまで食べるためであって、それさえ保証されたら仲良くする。互いの温もりを感じ合っているように見えました。文明が発達して機械に囲まれていると、動物の体温というか、温もりを忘れてしまうように思います。
〈宮嶋〉そうですね、きっと動物たちは自然に認め合ってお互いを受け入れているのかなと思います。人間もきっと個々で考えれば、そういう種族を超えた繋がりは持てると思うのですが、それが集団とか国とか、社会構造に組み込まれてくると、とても難しくなってくるのかなと思います。
――ピカソは「ゲルニカ」で戦争の悲惨さを訴えました。「ゲルニカ」には無差別の空爆から逃れる人々や動物を描くことで、それに反対するという直接的な側面がありますが、宮嶋さんの作品からはもっと根源的な、「この愛おしい世界を守らないといけない、いや、守りたい」というメッセージが伝わってきます。芸術と社会との関わり方について、宮嶋さんはどのようにお考えですか。
〈宮嶋〉歴史と芸術は切り離しては考えられないものなのかなと思います。でも、私個人としては、作品に社会的メッセージなどを意識して制作はしていません。ただ、自分も今を生きているので、何かしら感じたことが作品に反映されるということはあるかもしれません。
――作品にメッセージを込めすぎると逆にそれに縛られて苦しくなってきますし、普遍性も失われますから、時代の空気を自然に取り入れたというか、自然に入ってしまった作品がいいのかもしれませんね。

■利根山光人記念美術館でも作品展開催中!

――ところで、現在、岩手県北上市の利根山光人記念美術館でも「生きものたち」という展覧会(2024年11月24日まで)を開催されていますね。こちらはどういった美術館なのでしょうか。
〈宮嶋〉こちらは北上にゆかりのある画家の利根山光人氏の作品を取り扱っている美術館で、北上に構えていた利根山光人氏のアトリエ跡がそのまま美術館となって、継承されています。
――北上市といえば、諄子美術館でもよく個展をされていますね。及川諄子館長の個人美術館ですが、及川館長とはどのようなご縁なのでしょう。館長ご自身も絵を描かれているかと思いますが……。
〈宮嶋〉諄子美術館とは「リトルクリスマス展」という全国の画廊や美術館などで開催されていた版画のグループ展があり、そこに諄子美術館も入っていて、私の作品を気に入っていただき、まず展覧会のメインビジュアルに、次に個展にお誘いいただいたところからご縁が始まりました。諄子さんご自身も絵を描かれたり、とても感性が豊かな方で、いつも滞在中は楽しませていただいています。
――宮嶋さんのご出身は福島県いわき市でしたね。岩手県や福島県など、東北に特別な思い入れはありますか? 東北とひとくくりにしてしまうのは問題かもしれませんけれど。
〈宮嶋〉出身が福島なので、空気感は似ていると感じることはあります。電車からの風景もなんだか落ち着きます。特別な思い入れと言われるとやっぱり震災が思い浮かんでしまいます。滞在中も未だに自然に話題になったりしますね。
――震災で多くの命が失われましたし、社会の発展とは何か、人類の幸福とは何かを突き付けられた気がします。亡くなられたといえば、以前、宮嶋さんがお好きだと言っていた柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)さんが今年の1月末に亡くなられました。柚木さんは宮嶋さんの出身である女子美術大学の学長をされていたこともありますね。モノタイプを始めてから特に柚木さんの作品に注目するようになったと、かつておっしゃっていましたが、通常の絵画作品、リトグラフなどの版画、モノタイプでは、それぞれ取り組む際の意識は違うのでしょうか。
〈宮嶋〉柚木さんが亡くなったのはショックでしたが、100歳を超えて尚、精力的に作品を発表し展覧会もたくさん開催されていて、本当にすごいと思います。絵とリトグラフとモノタイプですが、それぞれアプローチの仕方が全然変わってくるので、技法に合わせて自然に絵の描き方が、少しですが変わっていると思います。
――実際に作品制作に取りかかる前に、アイデアスケッチなどをされますか?(たとえば常にクロッキー帳を持ち歩いているとか、といったことはありますか?)
〈宮嶋〉版画を制作する時は、一応大まかな下絵のようなものを準備します。普段もアイデアスケッチのようなものを描いたりする時もありますが、紙にお米袋を使っているとやっぱり自然と紙に合わせて、描くものが変わっていくことも多いです。

■心が静まるような作品で、お迎えしたい。

――以前のインタビューで、飼ってみたい動物を伺ったときにインコとのことでしたが、個人的な話になりますが、前にオカメインコを飼っていたことがあり、そのとき「インコとは通じ合える」(笑)と思ったことがあります。最初の話に戻ってしまいますが、動物とはもちろん、人間同士もわかり合えるはずだと思うんですが、諍いが起こるのは、何かが邪魔をするのでしょうね。それは単に苛立ちなのかもしれません。宮嶋さんの作品を見ていると、苛立ちが収まるような気がします。
〈宮嶋〉オカメインコいいですね! つがいを大切にするインコはそれが人間でも同じように接するというような話を聞いたことがあります。先ほどとも重なってしまうかもしれませんが、きっとひとりひとりきちんと向き合えれば分かり合える部分は出てくるのかもしれません。でも、それは結構大変ですよね。自分も含め、本当に大切になものは何なのか、ちゃんと自分で考えることが大事なのかと思います。でもイライラしていたらそんな余裕がなくなってしまうと思うので、少しでも私の作品で苛立ちが収まると言っていただけると、なんだか嬉しいです。
――最後に365カフェで作品をご覧になった方にひとことお願いします。
〈宮嶋〉ふっと心が静かになったり、少しの余裕が出来るような、そんな作品でカフェにいらっしゃる方を迎えられたらいいなと思います。ゆっくりお茶を楽しむ時間に、チラリと絵を観ていただけましたら幸いです。遠方になりますが、もしも機会があれば岩手県北上市にある利根山光人記念美術館の方にも、ぜひ訪れてみていただけましたら嬉しいです。

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