第40回 365cafe 作品展
池田はるか 作品展 
2025年12月17日(水)-2026年1月22日(木)

池田はるか

1990年東京生まれ。武蔵野美術大学油絵科卒。2020年より個展活動を始め、主としてアクリル絵の具を使い特定の二人の女の子の「ちょっとうまくいかないやりとり」をテーマに、イラストレーション的見た目で。連作としてマンガを掲載するように、絵画作品として制作しています。「理性と感性」のように、正反対な立場をとる二人の姿を通じて、だれもがもっている自身や相手に対する「幼さ」を親しみやすい女の子の視点で表しながら、私達の「うまくいかないコミュニケーション」とその瞬間を絵画に描き起こすことで、自分たちの「幼さ」を受け入れたうえで、どこまでもふくらむ他者との豊かな繋がりを夢見ています。

【主な作品展】
2020年 個展「わたしとあのこのいつかのやりとり」新宿眼科画廊
2021年 グループ展「2021年の雛祭り」shuuue/東京
2021年 個展「ふたりあそび」BLANK/東京
2022年 個展「あの子、家、わたし」act complex center tokyo/東京
2022年 グループ展「UTSUWA」白白庵/東京
2023年 個展「たびのふたり一座」(art complex center / 東京)
2023年 グループ展「パラレルの庭」(せんつく2ウチマナベ / 東京)
2024年 グループ展「こわれてない家」art complex center / 東京)
2025年 個展「ふたりのいつかのお家」(新宿眼科画廊 / 東京)

ふたり庭づくり

夜とふくらみ

カレー小島

【見どころ】
最初に池田はるかさんの作品展示を見たときに感じたのは、「見ているだけでも可愛らしい二人の女の子のイラストレーション」ということでした。しかし作品展の会場をぐるぐる回り、ひとつひとつじっくり見ると、そんな表面的なことではない「なにか」がそこにあるのに気づきました。実はその「なにか」は、いまもってわかりません。一枚の絵画に、画家は思いを込めると思うのですが、池田さんは「他者との繋がり」をそこに夢見ているというのです。つまり、絵に描かれた女の子二人の関係性に加え、見ている観客と作者との関係性をも追究しているように思えます。一見楽し気な作品の裏側を探っていきたいと思います。

インタビュアー 株式会社サンポスト 前田 敏之)

最初は、対立している二項を抽象画として描いていた。

――池田さんの作品世界についていろいろお伺いしたいと思うのですが、その前に軽い話題から(笑)。作品を拝見したときに、真っ先に思い出したのが、映画の『ベイビーわるきゅーれ』だったんです。杉本ちさと(高石あかり)と深川まひろ(伊澤彩織)が大好きでして、女子の二人暮らしの楽しさって、独特なんだろうなと思ったりしていました。『ベイビーわるきゅーれ』はご覧になったことはありますか? ドラマにもなっているんですが。
〈池田〉知らなかった! 面白そうですね、今度見てみます!
――杉本ちさとと深川まひろもまったく違う性格で、かつ「幼く」、「うまくいかないコミュニケーション」を底辺で支えているのが、二人が殺し屋だということなんだと思います。性格も社会性も違う二人が同一空間にいる静かな緊張感とワクワク感が映画の魅力でもあります。池田さんの作品にも、それが感じられます。対立する二項を作品に取り入れるというのは、どういう経緯で始められたのでしょうか。
〈池田〉あまり意識してそうなっていったわけではないですが、おそらく小学生低、中学年のときに見たワーナーのアニメーションの影響があるのでは……? トムとジェリー、ピンキー&ブレイン、デクスターズラボといった、ボケとツッコミの役割がはまった、コンビの話が好きだったんでしょうね。『ベイビーわるきゅーれ』からなんとなく連想しましたがダーティペアも、大好きでした。それから徐々に日本の漫画に興味が移るのですが、こういったキャラクター文化が根底にあるんだと思います。
――ダーティペア、懐かしい(笑)。二人が活躍する話って、確かに二人の掛け合いもありますから、魅力が増しますね。映画の『テルマ&ルイーズ』も二人の逃亡だからいいのであって、ひとりのままだったら、ただの逃亡者になってしまう。では学生時代からずっと二人の女の子をモチーフに描かれていたんですか。
〈池田〉学生時代は、絵画においてはキャラクター的表現を封印して自分と他者、内と外、のような相反する二つの対象をイメージし、色面をつかって抽象的に作品を描いておりました。卒業してからは漫画とイラストレーション表現に挑戦したことから、だんだんと抽象的だった二つの対象が、明確な二人の女の子になっていきました。
――初めは抽象画! ぜんぜん違った感じだったのですね。絵は子どもの頃からお好きでしたか?
〈池田〉思いつくままフラフラどこかに行ったり、人形遊びをして頭の中でキャラクターや物語を自分の頭の中で作って、一人で楽しんでいるという感じでした。小学生の時から絵を褒められることが多かったことと、自由帳にイラストや漫画を描いていた延長で絵を描くことに興味があったので、中学校、高校と美術部に入りました。
――美術部だと部活で油絵なども学ぶのでしょうか。
〈池田〉中学生のときはそこまで本格的ではなくて、友達と落書きして過ごす感じでしたが高校になって、美術部顧問の先生の勧めで、初めてきちんとした作品を作ることに向き合いました。アクリルでコンクールに出す作品を描いたりしましたね。油絵にしっかり触れたのは美術予備校からですね。
――それでは美大へ進学するというのは、ごく自然な流れですね。
〈池田〉進路を考えた時、自信があることが絵を描くことぐらいだったので一つの目標として目指してみようという気持ちでした。
――いくつかある美大の中で、武蔵野美大に行かれたのは、なぜでしょうか。
〈池田〉実は受験がうまくいかず最初は女子美術大学の短大に入学して、その後三年次編入学をしてムサビ(武蔵野美大)に入りました。女子美では受験から解放され、純粋に自分の絵に向き合えて本当に楽しかったですし、もう少し学びたくて、東京で三年編入を受け入れている多摩美、ムサビを受けて、ムサビに合格したという流れです。
――女子美は楽しそうですが、ムサビはいかがでしたか?
〈池田〉ムサビでは絵画のみならず、様々な媒体で表現することそのものへの、多岐にわたる勉強ができました。また、同級生とのここだけの交流ができることも、私にとって重要な時間だったと思います。

大学の共有アトリエに絨毯を敷いて歓談!

――大学時代はひとり暮らしでしたか?
〈池田〉いえ、実家から通っていました。当時は作りたい作品のかたちなんて全く定まらず、色んなものに手をつけるも続かず迷走する日々でしたが、幸い友人にも恵まれ、楽しく貴重な時間を過ごしました。
――友達との思い出で、印象的なことはありますか? 恋バナでもいいです(笑)。
〈池田〉同クラスの共有アトリエの真ん中に、同じクラスの子が絨毯をしいてくれて、そこで談笑したり、漫画がどんどん増えていったり、自分でも足したりしてほかのクラスの人も頻繁に遊びにきたりする、不思議な空間に居られたことがなんだか印象的でした。そのまま連れだって友人宅で鍋を食べたり、もちろんトラブルもあって喧嘩して仲直りしたり、いま思うと大学生らしい青春だなぁ(笑)。
――余談ですが、NHKの夜ドラで『ひらやすみ』というのをやっていて、なっちゃん(森七菜)が美大に合格して山形から東京に出てきて、コンパで飲み過ぎて大変なことになったりして……実にほのぼのと面白いんですが、ロケ場所はムサビだと思います。大学生活って、友達とすれ違ったりということもたくさんあったかと思います。「うまくいかないコミュニケーション」というのは、実に印象的な言葉ですね。実際問題として、うまくいかないこと、多いですよね。
〈池田〉絵の中の二人は、何かとすれ違ったり小さな失敗をしていますが、こういった小さなコミュニケーションの失敗の重なりは現実においてタイミングによってはいらだちになることもあると思います、でもそれをなかったことのように過ごすのではなく、全部を大切なものとして克明に絵に記録し、まあこんなもんだろうと、また諦めずに何度も日々をやり続けるためのお守りのような気持ちで描いています。絵画の中で、なんとなくうまくいっていないながらもそれでも二人は楽しくにぎやかに過ごしています。しかし当人たちなりに、意識的にも無意識的にもほんとうに致命的なことが起きないよう、互いが互いのいま足りない成分を補うように、いたって真剣に、ちゃんとすれ違ったり、うまくいかずに過ごしているのだと思います。
――かつての宗教画は、聖書などの話を絵画として表現していました。池田さんがいう「お守りのような気持ちで描いている」ということから、池田さんの作品は、池田教というご自身の宗教の、いわば宗教画にも思えてきました。
〈池田〉ふたりの物語の一場面を切り取って、作品にしているので、作りとしても宗教画にシンパシーがあります。絵画に向かう姿勢として原始から繋がる願いや教訓、神話を絵画として書き綴るように、その趣に繋がる寓話的な作品でありたいと思って描いています。
――二人のほかに、ちらりと登場する動物(?)も可愛いです!
〈池田〉動物(?)はふたりの生み出したイマジナリーフレンド、という設定です(笑)。現実でも、誰かとのコミュニケーションにおいて共通の話題は重要ですが、そのような二人が二人であるために生み出した共通の友達であり、同時に守り神のようでもある、ありがたい存在です。
――ペットは飼っていらっしゃいますか?
〈池田〉いえ、いまは飼っていないですが、実家で犬を飼っていました。その面影はあるかもしれません。
――ますます宗教画に思えてきました。でも暗く沈んだ色彩の宗教画がほとんどなのに対して、池田さんの作品は明るいです。そこがまた大きな魅力だと思います。

「可愛いもの」は、世界を優しく平和にする。

――尊敬する作家の方はいらっしゃいますか?
〈池田〉熊谷守一さんです。極限まで研ぎ澄まされた、線と色彩のあっけらかんとした愛おしい素朴さに、あこがれています。
――いいですよね。蟻なら蟻の、ウサギならウサギの本質が見事に捉えられています。 熊谷守一さんは油絵ですが、その質感も、なんというか物質としての存在感に溢れています。池田さんは、学生時代は油絵を描いていらっしゃったと思います。アクリルだとまたアプローチの仕方などが異なると思いますが、油絵はもう描かれないのでしょうか。
〈池田〉私も油絵独特の重さが好きで、また使いたい欲求はありますが、いまの絵柄にうまくはまらず……今後厚塗りが新しく絵柄にはまってくれば、あるかもしれません……!
――作品の制作手順を教えてください。アイデアスケッチなどは相当されるのでしょうか。
〈池田〉絵画以外の四コマ漫画で描いたやりとりや、以前描いた絵の続編、日常に見つけた風景に、ここに二人がいたら面白いな……などと、日々のアイディアを集結してラフを描き始めます。ラフを描きながら、同時にこの二人はいま何を考えてるんだ……? とお話を考えるように絵の内容を詰めて行き、謎と気づきを繰り返しながら絵を描いています。
――どんな道具を使っていますか。たとえばスケッチブックは〇〇で、鉛筆は〇〇がお気に入り、とか。筆や絵具はこれがないと困る、といったようなことはありますか。
〈池田〉そこまでこだわりはないですが、絵の具はホルベインのアクリリックカラー、鉛筆はuniが使いやすいです。線を引くので日本画用の面相筆はマストです。
――制作は集中して行う方ですか、それとも毎日少しずつでしょうか。
〈池田〉あまり集中が続かないので地道に描きつつ最後に一気に集中して終わらせます。
――いまはどんな生活パターンでしょうか。
〈池田〉現在は働きつつ、常に部屋に作品を置いて、ルーティンというよりはヒット&アウェイのように、日常の中でいつも描けるようにしています。
――本や映画など、他の芸術分野でお好きな作家はいらっしゃいますか。
〈池田〉小説家だと梨木果歩さん。特に『西の魔女が死んだ』等が有名な方で、この方の『春になったら苺を摘みに』というエッセイが大好きです。音楽は新居昭乃さんや、やくしまるえつこさんが好きです。映画は『アメリ』が大好きです。
――新居昭乃さんの、たとえば『覚醒都市』とか『昼の月』がお好きなのって想像できます。やくしまるえつこさんの曲も。彼女はイラストも描いていますね。
〈池田〉『覚醒都市』をよく聴きますね……『花かんむり』とか……。やくしまるえつこさんの音楽は、ご自身のイラストがそのままCDジャケットになっていますよね。耳でも視覚でも楽しませていただいています。
――『アメリ』は空想世界で生きてきた女の子が大人になって、コミュニケーションが苦手で……って、池田さんの描く作品のコンセプトと共通していますね。アメリを演じたオドレイ・トトゥの髪型がポップで実にキュートです(笑)。池田さんは基本的に可愛らしいものがお好きなんですね。可愛らしいものって、批評家などからは一段下に見られがちですが、それは間違いで、可愛いものこそ世界を平和にしますね。
〈池田〉自分として、可愛らしさは自然に出てくる大切な形です。おっしゃる通り作品を通して誰かの気持ちをなだめたい、平和を作りだしたい、という願いが確かにあります。作家としても、誰にもあるこういう時期のような「幼さ」の写し身として描いているので、比較的親しみを持ちやすく、可愛らしい形が作品にとって重要だと考えています。ただ絵画としてまとめるに当たって、可愛らしいことだけが主目的になりすぎないように、新しい絵画表現としての形を探求しております。
――そうか、絵画表現としての形の探求があるからこそ、可愛いだけはない絵画としての奥行きがあるのですね。絵を描く以外で、お好きなこと(趣味)はなんでしょうか。
〈池田〉ゲームが大好きで、やるときはその世界に没頭します。ウインドウショッピングも好きで、時間があるときにブラブラします。食い意地が張っているので美味しいものにも目がないです。
――ひとことでゲームといってもRPG、アクションゲーム、パズルゲームなどさまざまですが、どんなゲームがお好きなんですか。
〈池田〉俗にいうオタクだったので、世界観のあるRPGに没頭することが好きです。濃厚なストーリーと、キャラクターの掛け合いを眺めて一喜一憂します。いまでいう押しキャラもいます。
――ちなみに、押しキャラは誰ですか?
〈池田〉なんだか気恥ずかしくて(笑)。最近やっているのは『原神』で、アルベドっていう研究者気質なキャラクターが好きです。ほかにも天真爛漫だったり、憎めない愛嬌のあるキャラクターを好きになる傾向があります。『進撃の巨人』のハンジさんやサシャとか伝わりやすいですかね。
――ハンジやサシャは私も好きです(笑)。サシャといえば、肉が好きでしたね。池田さんも食い意地が張っている(笑)ってことですが、食べ物はどんなものがお好みですか?
〈池田〉お寿司、焼き鳥、エスニック、大好きです。どうしても嫌いな食べ物は梅干しです……梅酒は飲めるんですが……(笑)。
――不思議ですね、梅干しはダメでも梅酒はいけるって。そういうのありますよね。私もアジの刺身は大好きなんですが、アジフライはダメなんです。食べるとなぜか頭が痛くなってくる(笑)。すみません、話が脱線しました。美味しいものを食べに、旅行など行かれることはありますか?
〈池田〉旅行、好きです。現地の食べ物にありつきたくて、行くたびに食べ過ぎますね。できれば旅館でゆっくりしたいです。いまはなんとなく鳥取砂丘に行ってみたいです
――絵に限らず、将来やってみたいことはなんでしょうか。
〈池田〉ざっくりとした願望ですが、ギャラリー、キュレーション活動と、人々に絵を描く喜びを伝える活動をしてみたいです。
――こうした作品展も、絵を描く喜びが伝わってきます。今回、365カフェで池田さんの絵をご覧になった方へ、メッセージをお願いします。
〈池田〉ふたりの絵画の物語の一片でも気に入っていただければ幸いです。日常のお供として、眺めながらちょっとひと笑いして、また日常へと向かう導入剤のように楽しんで頂けましたら本当に嬉しいです。

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企画:編集プロダクション 株式会社サンポスト  協賛:朝長デザイン事務所

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