第14回作品展 大谷津紗和展(終了)
ちょっと憂いを帯びた人物、優しい色彩の静物、見る人の心に静かに入り込んでくる一見親しみやすい絵画でありながら、実はそこには見えない穏やかな毒が仕込まれている。みな、いつしかその毒にやられてしまい、思考を停止し、作品世界に取り込まれてしまう。ちょうどある種の水母が触手によって獲物を麻痺させるかのように。そっと、ふわりと、気づかないうちに襲われ、痺れるのだ。おそらくその不可解さ、不思議さ、深遠さは作者が意図したものではなく、まだ方向性が定まっていない、限りなき可能性を秘めた内なるエネルギーによって表現されたものに違いない。作品を前に、素直に楽しむのもよし。またダブルミーニングを読み取るべく、思案するのもまたよし。いろいろな捉え方ができる大谷津紗和さんの作品世界。その裏側に迫ってみたいと思います。